発達障害は大きく「ADHD(注意欠陥多動性障害)」「ASD(自閉症スペクトラム障害)」「LD(学習障害)」の3つに分類され、僕はその中のADHDの診断を受けています。
ただ、ADHDのみ、ASDのみという方はそこまで多くなく、半数くらいは「混合型(ADHDとASDのハイブリッド)」とされています。
【本記事はこのような悩みを持っている方におすすめ】
・ADHD・ASDの特性が同時に出るってどういうこと?もしかしたら私「混合型」かも?
・私が混合型でかなり困っている…何か良い対処法はないの?
今回は、ADHD・ASD混合型になる主な原因、仕事で生じる悩み、具体的な対処法などについて解説していきますので、興味をお持ちの方は参考にしてみてください。
目次
ADHD・ASD混合型とは?
ADHDとASDの双方の特性を併せ持つ方は、一般的に「ADHD・ASD混合型」「ADHD・ASDの併発タイプ」などと呼ばれています。
ADHDとASDはそれぞれ別個のもので、本来なら単独で現れる特性です。
しかし、以下2つの要因によって併発するケースが多々あるとされています。
【併発にいたる2つの要因】
・遺伝的要因
・神経生物学的要因
遺伝的要因
そもそも、ADHDとASDはそれぞれ遺伝的な要因によって発症することが多いとされています。
そのため、両親のどちらかが発達障害の特性を持っているなら、そのお子さんに遺伝する可能性は十分にあるといえます。
このような背景があることから、仮に父親がADHDで母親がASDである場合、両方の特性を持つ子どもが生まれるのはそれほど不思議なことではないといえるのです。
神経生物学的要因
神経生物学とは、脳が働く仕組み、脳内にある神経回路、認知機能のメカニズムなど主に人の脳について幅広く研究する学問のことです。
脳の中には前頭前野(記憶保持・感情コントロールに関係している)や線条体(意思決定・習慣的行動に関与している)などがあり、それらが発達障害に関わっているとされています。
なかでもADHD・ASD混合型は、注意機能や社会性を司る脳内ネットワークの異常が重なり合うことでも生じるとされていますが、これは単なる「重ね合わせ」というものではありません。
【ADHD・ASD混合型の神経回路の特徴】
・純粋なADHDの神経回路とは異なる性質を持っている
・純粋なASDの神経回路とは一部共通している
単純に「ADHD+ASD=混合型」とはならず、「ADHD・ASD混合型」という別個のものとして扱う必要がある点に注意が必要です。
ADHD・ASD混合型の方が持っているリスク
ADHD・ASD混合型の方は、主に以下のような悩みを持っていることが多くあります。
【ADHD・ASD混合型の方が持っている主なリスク】
・単独型の方より大きな悩みを抱く可能性が高い
・単独型の方より周囲の理解が得にくい
単独型の方より大きな悩みを抱く可能性が高い
ADHD、ASDの単独でもさまざまな苦悩を抱えますが、混合型の場合、さらなるつらさを味わう可能性が高いといわれています。
具体的な例として、主に以下のようなものが挙げられます。
【より深い悩みにつながってしまうケースの例】
・衝動的に余計なことを口走ってしまうADHD+空気を読むことが苦手なASD=人間関係が破綻しやすい
・紛失物が多いADHD+持ち物のこだわりが強いASD=買い物に使う時間・お金が甚大なものになってしまう
僕の悩みのひとつとして、「傘の紛失が多い」というものが挙げられます。
コンビニで売っているビニール傘ならそこまで手痛い出費とはなりませんが、僕は「本格的な傘を使いたい」という強いこだわりのせいで、1本2,000円ほどする傘を3~4本無駄にしてしまったという苦い経験を持っています。
また、人によっては「空気が読めない発言」を繰り返し、職場や学校の人間関係が悪くなってしまうこともあるでしょう。
単独型の方より周囲の理解が得られにくい
ADHDとASDの特徴が同時に出ることよって、「普通っぽく見える」のも併発型のデメリットのひとつとされています。
たとえば、以下のような「相反する特性」を持っている方は、周りの人からは「普通の人」だと見なされ、それによって必要な配慮が受けられない可能性があるため注意が必要といえます。
【相反する特性を持つ人の見られ方】
・気が散りやすいADHD+細部までこだわる完璧主義のASD=持てる力を出し尽くして「普通」の仕事をする
・几帳面なASD+時間を守ることが苦手なADHD=言葉には表せないような努力を重ねて「普通」の人と同じように行動する
定型発達者が余裕で仕事をしているのを横目に、自分の方は必死な思いで進めているという状況をイメージしてもらうとわかりやすいでしょう。
このような状況の中で苦しんでいる方は、おおよそ以下のような気持ちになるはずです。
【定型発達者の方に混じって仕事をしているときに思うことの例】
「どうしてみんなは平気な顔してミスなく仕事できるの?私は一生懸命やっているのにミスが多いし、仕事のスピードも遅い…」
「みんなはすでに帰っているのに、俺だけ残業している…こんなにがんばっているのにどうして?」
僕もこれまで何度も何度も同じような思いをして、そのたびに「努力が足りないからだ」と自分を責め続けていました。
人並み以上に努力してようやく「人並み程度」、あるいは「中の下」くらいにしかならない現実は、想像以上に自分自身の心に深い傷を残すのだと実感しています。
ADHD・ASD混合型の方に試してほしい工夫・仕事術
ADHD・ASD混合型の方に試してほしい工夫・仕事術として、主に以下のようなものが挙げられます。
【ADHD・ASD混合型の方に試してほしい工夫・仕事術】
・自分の限界以上にがんばらない
・勇気を出して打ち明ける
自分の限界以上にがんばらない
発達障害者の場合、そもそもできることとできないことの差が激しく、努力してもどうにもならない現実を目の当たりにしてしまうケースが少なくありません。
そのため、まずは自分の限界(何ができるのか、どこまで対応可能かなど)を知り、それ以上のことは誰かに頼む、諦めてやめるなど何らかの対策を講じる必要があるといえます。
たとえば職場のコミュニケーションが苦手な場合、以下のような対策が有効といえるでしょう。
【職場のコミュニケーションが苦手の場合】
・基本的に仕事のことだけ話すようにする
・雑談に参加する場合、あらかじめ「定型回答」を作っておく
”定型回答の例”
・私もそう思います(余計なことを口走ってしまわないようにするため)
・ありがとうございます。おかげさまで助かりました(感謝の気持ちを伝え忘れずに済む)
・なるほど。私は◯◯だと思いますがどうでしょうか?(相手を否定せずに自分の意見を伝えられる)
大事なポイントは、「決してYESマンになる必要はない」ということです。
職場のコミュニケーションは非常に難しく、定型回答のとおり話したからといってすべてうまくいくとは限りません。
しかし、自分でアクションを起こさないことには何も変わらないので、悩んでいる方は一路自分にできることから始めてみてはいかがでしょうか。
勇気を出して打ち明ける
自分一人で抱え込むのではなく、信頼できる人に相談することも大事なポイントのひとつです。
「努力不足」などと一蹴されてしまう可能性もありますが、人によっては親身になって話を聞いてくれるかもしれません。
相談するときは、「発達障害だから仕方がない」といった高飛車な態度は控え、「努力しているけど改善が難しい」「別の仕事があればぜひやらせてほしい」など真摯かつ前向きな姿勢で話すことが重要になります。
【相談するときのNG例】
・今やっている仕事は私には合わないから別の何かに変えてほしい
・ほかの人が担当している仕事ならできそうだから、それを私に任せてほしい
上記2つはいずれも「他責」にしてしまっているため、相談者に与える印象が悪くなりがちです。
特に発達障害に関わる相談はただでさえ理解が得られにくく、自分の意図していない方向で捉えられがちなので注意が必要です。
また、職場の人に相談しても解決できないようなら、専門家・公的機関の支援を受けるほか、転職・部署異動などして環境を変えるのも有効です。
【発達障害について相談できるところ】
・メンタルクリニック
・自治体が運営している発達障害の専門窓口
・発達障害に特化している転職エージェント
「職場の人に話しても全然ダメだった」「まずは話だけても聞いてもらいたい」という方は、メンタルクリニックや公的機関に頼ることをおすすめします。
また、「相談して理解は得られたけど職場の状況的に解決できない」ことがわかった方は、転職エージェントに話を聞いてもらうと良いでしょう。
転職エージェントは僕自身何度もお世話になっており、その都度必要なアドバイスを受けられるため、相談する価値は大いにあるといえます。
ADHD・ASD混合型の苦労は計り知れない
今回は、ADHD・ASD混合型になる主な原因、仕事で生じる悩み、具体的な対処法などについて解説しました。
・ADHD・ASD混合型と呼ばれる人がいる理由として、主に「遺伝的要因」「神経生物学的要因」の2つが挙げられる
・ADHD・ASD混合型の悩みは比較的重い傾向にある
・努力で改善できることはそれほど多くはないため、信頼できる人や公的機関などに頼るのも有効
ADHDとASDの特性を両方持つ方は、「せっかくの長所が発揮されなくなる」「特段困っていないように見える(普通の人っぽく見える)」といった悩みで苦しんでしまうことが少なくありません
問題解決を図るためにも、まずは一度自己分析を行い、「自分は何ができてどんなことができないのか」を正しく把握するところから始めてみてはいかがでしょうか。
上記の書籍も参考になるので、ぜひ一度チェックしてみてください。
今回もご覧いただきありがとうございます。
それではまた!