「セルフコンパッションは、過去に自分がしてしまった失敗に許しを与え、自身のメンタルを整えることを目的に行う認知行動療法のひとつです。
このとき、「自分のことを許してあげるだけじゃ次の行動が取れなくなるんじゃない?」と思うのが心情ですが、これは果たして本当なのでしょうか?
【本記事はこのような悩みを持つ方におすすめ】
・セルフコンパッションは大事だし定期的にしているけど、ダメな自分を許してあげるだけじゃ意味がないのでは?
・行動力が上がるんだったらセルフコンパッションをやり続けたいけど、実際のところどうなの?
今回は、セルフコンパッションへの疑問に答えていくとともに、実際に使えるセルフコンパッションワークを紹介していきますので、気になる方は参考にしてみてくださいね。
目次
セルフコンパッションと「甘え」の関係性
セルフコンパッションを行うことで「怠惰な自分になってしまうのでは?」という不安を持つ方も多いのではないでしょうか。
しかし、セルフコンパッションでサボり癖がついてしまうようなことはほとんどありません。
怠惰になってしまうのは、セルフコンパッションとはまた違ったことが原因となっていることが多いためです。
セルフコンパッションの概要
「セルフコンパッション」とは、自分のことを許し、自分のことを慈しむために行う認知行動療法のひとつです。
仕事のミスや育児のストレスなど、日々やるべきことの中で「私はもうダメ無理…」と思い詰めてしまうこともあるかと思いますが、セルフコンパッションの実施によって自身のメンタルの安定化が叶うようになります。
セルフコンパッションの根幹となるものは、以下の3つとされています。
【セルフコンパッションの根幹】
・マインドフルネス
・共通の人間性
・自分への優しさ
これらのポイントを押さえることが、セルフコンパッションの第一歩となります。
なお、セルフコンパッションの基本については以下の記事で詳しく解説していますので、こちらも併せてご覧になってみてください。
サボり癖の原因は自己批判?
セルフコンパッションによって自分の気持ちにゆとりを持てるようになり、行動量がアップするといわれています。
一方、行動力は自己批判のループによって下がるとされています。
【自己批判のループの内容】
①自己批判 (どうして自分はできないんだろう…)
②過剰な決意(次は絶対に成功させよう!)
③二度目の失敗(またできなかった…)
④不安(どうせまた次もできないだろう…)
⑤諦め(もう挑戦するのはやめよう…)
上記のように、「自分はできない」という自己批判から新たな挑戦をやめてしまう方が少なくありません。
逆に、「やる気を高めたい」「もっと行動したい!」と思う方は、セルフコンパッションが効果的に作用します。
【セルフコンパッションによって得られる思考の例】
・失敗しても当面の間暮らしていけるお金はあるから、勇気を出してチャレンジしてみよう
・何かあったらまたやり直せばいいだけだよ
・一回で成功するなんて無理だから、失敗を受け入れて何度でも挑戦しよう
セルフコンパッションを実施する際、もう一人の自分を頭の中に登場させて、自分に対して肯定的な言葉かけていくことで、行動に対するやる気やモチベーションはより上がるようになります。
「失敗して自分を批判するのではなく、失敗を経て前に進むようにマネジメントしていく」のがセルフコンパッションの根っこにある考え方で、怠惰な自分になるために行うものではないのです。
今後の行動を促すセルフコンパッションワーク
ここからは、実際に行うセルフコンパッションワークを紹介していきます。
怠けている自分を許し、今後の行動のモチベーションにつながるようにするためのワークなので、無理のない範囲で実践してみてください。
【セルフコンパッションワークの主な流れ】
・改善させたい「歪んでしまった思考・行動」を書き出す
・自己批判の声を特定する
・自己批判したときの気持ちを書く
・自己批判が起きた理由、それに対する有効な声掛けを書く
・自分に優しいメッセージをかける
改善させたい「歪んでしまった思考・行動」を書き出す
まずは、自分が持っている歪んでしまった思考の中で改善させたいものを選びます。
僕は、「他人の評価を気にしてばかりいる自分」を変えたいと思っていますが、これがなかなかやっかいで、正直なところ今も変えることができていません。
ほかにも、以下のようなものがやめられません。
【改善させたい思考・行動の例】
・上司のご機嫌取り
・ミスの発生による自責グセ
上記のようなことから無理に頑張ってしまうことも多いのですが、それで得られるものといえば上司からの「了解」というビジネスライク的な返事のみです…
少し話がずれてしまいましたが、この「他人の評価」が自分の軸になっている場合、上司や先輩・同僚の言動に振り回され、いつのまにか無茶な長時間残業、コンプライアンス違反の指示なども断れなくなってしまうおそれがあります。
また、「もっと頑張らないとクビになってしまうのでは?」という特に根拠もない妄想にもとらわれてしまい、体や心に鞭を打ち、さらに自分を追い込んでしまう可能性もあるので注意が必要です。
自己批判の声を特定する
ここからは、「他人からの評価を気にするあまり、自分を追い込む行動をしてしまった」場合を例に挙げて解説します。
最初のポイントは、「自分にどんな言葉をかけているのかを書くこと」です。
おそらく、がっかりしているような言葉や、自分を責めてしまうような言葉が多いのではないでしょうか。
【自己批判の声の例】
・また無茶な要望を引き受けて、まったくホントに私は人が良すぎるよ…
・他人のことばかり考えていたらいつまでたっても残業が減らないのに、どうして断らないの?
上記のように、自分の素直な気持ちを書き出してみてください。
自己批判したときの気持ちを書く
次は、批判してしまったときの気持ちを挙げていきます。
【自己批判の際に生じる「素直な気持ち」の例】
・好きで自分を追い込んでいるんじゃないのに、そんなことを言われたら余計に傷つくよね…
・ホントは断りたいのに断れないから苦労しているのに、そんなこと言わないでよ…
特に正解はありませんが、弱い自分をさらけ出すように書いていくのがコツです。
自己批判が起きた理由、それに対する有効な声掛けを書く
続いて、自己批判の声が出てきた理由について書いていきます。
いつまでも変わらない自分に憤るのは、自分を粗末に扱うような行動を取り続けているからかもしれません。
基本的に、多くの仕事は「健康」な状態でないとできませんので、下記のような声掛けをするのが有効です。
【自己批判の理由と例】
・自分を粗末にしているから
→クビになるのと体を壊すのどっちがいいの?
上記のような声掛けをしているにもかかわらず現状を変えない場合、身体やメンタルを壊してしまうおそれがあるので、冷静に自分のことを見つめ直し改善を図るようにしてみてください。
自分に優しいメッセージをかける
最後に、セルフコンパッションの基本である「自分に優しいメッセージを投げかける」という作業を行えば終了です。
他人の評価を気にしすぎるあまりつい無理をしてしまう自分を認めてあげるような、心の奥に響くような優しい言葉をかけていきます。
【優しいメッセージの例】
・たしかに仕事で成果を出したい気持ちはわかるけど、それよりも大事なことは体調だよね
・頑張ることは悪いことじゃないけど、嫌いな上司のために頑張ることは違うよね?
・少ない労力で結果を出せるようになった方がカッコいいよ?
このように、今までの自分を責めることなく上手に促すような言葉を投げかけていきます。
行動や考え方を変えるのに必要なのは、「自己批判ではなく優しい言葉」なので、ありったけの言葉を使って自分のことを労ってあげるようにしてください。
行動力を高めるためにもセルフコンパッションを続けよう
今回は、セルフコンパッションによって甘えグセはつくのかという問いの答えや、実際に使えるワークについて解説しました。
・セルフコンパッションによって甘えグセがつくことはほとんどない
・自己批判によって行動力下がることがある
・自分のことを労わるメッセージを投げかけて行動力を高める
他人からの評価、とりわけ会社や上司からの目線や評価を気にするという思考を変えたいと思う方も多いのではないでしょうか。
しかし、上司からの批判や発達障害の特性など、さまざまなことが理由で自分の意見を通せないという方も少なくありません。
くじけてしまう自分を責めるのではなく、自分をきちんと受け入れて慰めることが重要なポイントになりますので、セルフコンパッションを行い自分をケアしながら自分が理想とする姿に近づいていきましょう。
今回もご覧いただきありがとうございました。
それではまた!