働き方の多様化が進み、仕事だけでなく、趣味や子育てなど、仕事以外の時間を優先したいと考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、発達障害の方は、目先の仕事や生活に精一杯で、なかなかそのようなことに目が行きません。
・発達障害は、人生のライフイベントを楽しめないの?
・このまま仕事ばかりの人生になるの?
今回は、仕事とプライベートの両立を考えている発達障害の方に向けて、ワークライフバランスの整え方について解説します。
目次
ワークライフバランスの意義
人生を歩む中で、人は皆それぞれやるべきことを決めて生きていきます。
一部の富裕層や「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」を達成している人、つまり不労所得のみで生きていける人を除き、仕事をしないとお金を得ることができないため、何らかの形で働き収入を得ています。
仕事だけになってしまうと恋愛や結婚、趣味や育児などに時間が割けなくなるため、多くの人は「ライフワークバランス(仕事と生活を調和させること)」を意識しながら働いているのが一般的ですが、発達障害の場合、これがなかなかうまくいきません。
発達障害とライフワークバランスの相性の悪さ
仕事や育児に時間を割き、残りの時間で余暇を楽しむなどするのが一般的です。
しかし発達障害の場合、自分自身のことで精一杯で、ほかのことがおそろかになってしまいがちです…
具体的な理由について、以下で詳しく解説していきます。
仕事の疲労が溜まっている
仕事の内容によって異なりますが、貴重な休日を平日に溜まった疲れを取るためだけに使うことも多く、せっかくの余暇時間を楽しむことができないケースも少なくありません。
僕はADHDのため常にミスが多く、さらに時間もかかりがちなため、毎日残業が続くことも珍しくありません。
たとえ休日が訪れても、日々の睡眠不足の影響で「どこかに出かけよう」と思えなくなり、おおよそ家の中で過ごすことがほとんどです。
・友達と遊ぶ
・行きたいレストランで食事を取る
・映画館に行く
このようなことは、仕事で疲れている状況では非常に難しくなります。
身の回りのことで精一杯
平日にできなかった家事は、当然ながら休日にまとめてやらなければなりません。
掃除や買い物などに時間を取られてしまい、映画を観るなどリフレッシュのための行動が叶いません
心身の健康の維持だけでなく、自分のやりたいことを実行するためにも、忙しすぎる日々を送っているようなら仕事についてあらためて考える必要があるといえます。
会社の利益にもつながる
内閣府の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会」が中小企業の採用コストについて調査を行いました。
ワークライフバランスを重視した中小企業としなかった中小企業を比べた結果、採用にかかる費用が一人あたり約16万円ほど抑えられたそうです。
ほかにも、一時休職した社員に支援対策を行った場合と、新規採用して新たに人員を増加した場合にかかる費用は、前者の方が費用が抑えられます。
つまり、ワークライフバランスを重視して働きやすい職場環境を整えた方が経営コストをより削減できるといえます。
※参考 内閣府 「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会」
ワークライフバランスを重視しない会社で働くことのデメリット
残業時間が増えれば増えるほど、業務終了後に使える時間が減っていきます。
家に帰るまでにかかる時間や家事に使う時間を考慮すると、余暇に充てられる時間はそれほど多くはありません。
ワークライフバランスを重視せず、従業員を酷使する働き方を強いる会社に勤めると、以下のようなトラブルや問題が生じかねません。
仕事以外のことができなくなる
仕事中、下記のようなことが頭に浮かんできてしまい、集中力が途切れてしまったという経験を持つ方も多いのではないでしょうか。
・早く帰って眠りたい
・彼氏と食事に行きたい
・子どもと一緒に遊びたい
仕事が自分の最優先事項であれば、特に大きな問題にはなりません。
しかし、余暇の時間が大事と考える方や、結婚をして家庭を持つ方であれば、プライベートを充実させたいと考えるのが心情です。
・好きなアーティストのライブに行く
・子どもと一緒に動物園に行く
・両親の病院に付き添う
仕事が中心の生活を送っている場合、上記のようなことは難しくなってしまうかもしれません。
子どもにも影響が出る
たとえば、自分の子どもが保育園に通っていて、風邪などで高熱を出してしまって場合、もう仕事どころではありません。
このとき、従業員一人ひとりのライフワークバランスを大切にしている会社であれば、特に後ろめたさを感じることなく早退の相談ができます。
一方、早退や有給についてあまり理解がない会社の場合、風当たりが強くなることが予想されます。
・早退するの?いきなりそんなこと許可できるわけないだろ!
・早退するのはいいけど、君の仕事、誰が代わりにやってくれると思う?
いずれにしろ、罪悪感でいっぱいになってしまい、いたたまれない気持ちで子どもを迎えに行くことになるでしょう…
会社側が率先してワークライフバランスを重視した環境を用意することが、社員・会社双方の最善策なのかもしれません。
発達障害の方がワークライフバランスを整えるためにやること
発達障害の方の多くは真面目で努力家です。
自己肯定感の低さや、自分の欠点を補おうとして、人よりもたくさん頑張ってしまうのです。
しかし、努力しても人並み程度、あるいはそれ以下の結果になることの方が多く、帰宅途中にへこんだり落ち込んだりしてしまうことも珍しくありません…
こんな状況ではライフワークバランスどころではなくなってしまうので、以下のような対策を講じなければなりません。
特性に合った場所で努力する
残業時間を減らすために、ミスをしないように工夫したり、新しいスキルを身につけたりするなど自己研鑽に努める方も多いでしょう。
僕自身、タスク管理術や生産性の上げ方に関する本を読み、少しでも毎日の仕事に活かせればと思いながら実行してきましたが、大きな改善にはいたりませんでした。
もし今の仕事で結果が出なかった場合、転職や副業などに目を向けて努力した方がいいのかもしれません。
・今の仕事とは違う仕事を副業として始めてみる
・好きな趣味に打ち込んでみる
・思い切って他業種に転職する
自分の苦手を克服しようと努める姿勢は、仕事に限らずどんなことでも大事です。
しかし、一定以上の時間をかけて取り組む必要があるほか、結果を出せないことも多いです。
もし発達障害のことで悩んでいる方は、以下の記事を読んでみて、「働きやすさ」について考えてみてはいかがでしょうか。
執着や固定観念を取り払う
たしかに世の中は厳しいですが、仕事は探せばいくらでもありますし、働き方も多様化しています。
自分を苦しめているのは、もしかしたら自分の執着や固定観念なのかもしれません。
・今の会社で頑張ってきたことが無駄になってしまう
・転職してもうまくいくかどうかわからない
・趣味に時間を使うのは無駄だ
・仕事と子育ては両立できて当たり前
真面目な人ほど上記のような悩みを抱きがちですが、人生どう歩むかは人によってそれぞれ異なります。
キャパや能力も人それぞれ違うので、無理に他人と比べて自分の行動・意思決定を変える必要はありませんよ。
心理学を学ぶ
人は何かを失うことに大きな恐怖を感じる(プロスペクト理論)生き物で、新たなチャレンジを避けがちです。
プロスペクト理論は、元々経済学で使われている言葉ですが、心理学の世界でも登場します。
一万円を得る喜びよりも、一万円を失う恐怖・絶望感の方が大きいという研究結果があり、ここから人は何かを得るよりも失うことを恐れると言われています。
さらにバイアス(先入観や思い込みのこと)にかかる方がほとんどで、バイアスを避けるには自分の意識を変える努力と訓練が必要です。
・バイアスの種類や特徴について知る
・定期的に自分の考え方のクセについて考える
・バイアスにかかりやすいことを意識して生活をする
上記のような対策を行い、少しずつ自分の考えを矯正しバイアスにかからないよう意識することが重要です。
また、バイアスの種類は以下のように多岐にわたります。
【代表的なバイアスの種類】
・確証バイアス(confirmation bias)
自分の意見や仮説が正しいことを証明したいがために、偏った情報を優先してしまうこと
・内集団バイアス(in-group favoritism, in-group bias)
自分が所属している集団や組織、またはかつて所属していた集団をほかの集団よりも高く評価すること
・正常化バイアス(Normalcy bias)
不測の事態が発生したときに「大したことはない」「自分は大丈夫」と思いこんでしまう認知行動のこと
すぐに現状を変えるのは大変なことですが、無理のない範囲で少しずつ取り組んでみてはいかがでしょうか。
ワークライフバランスを意識した働き方を見つけ、自分なりのライフスタイルを確立させましょう。
ワークライフバランスを意識して今の働き方を見直そう
今回は生きづらさを抱える発達障害の方に向けて、ワークライフバランスの整え方について解説しました。
・時間は有限であることを意識し、仕事以外の時間を作るようにする
・仕事の生産性を上げるためにもプライベートの時間を大切にする
・努力の方向性を見直し、働きたい会社・活躍できる仕事で生きていく
従業員のプライベートを大切にし、ワークライフバランスを重視している会社は、たしかに増えてはきていますが、まだまだ少ないのが現状です。
また、働きやすい会社・職場を探すことは重要ですが、その前に自分の価値観や望む働き方を明確にさせておく必要があります。
・メンタルを病まないように、低ストレスで働く
・プライベートを優先し、仕事は生きるための手段と考える
もちろん、仕事に価値を感じている方は、上記のような価値観を持つ必要はありません。
自分のやりたいことや、理想の姿をイメージしつつ、たくましく生きていきましょう。
また、こちらの本も参考になりますので、よければチェックしてみてください。
今回もご覧いただきありがとうございました。
それではまた!